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名古屋地方裁判所 昭和46年(行ウ)39号 判決 1971年10月26日

原告

須藤安範

被告

名古屋地方検察庁検事正

八木新治

主文

一、原告の本件訴えを却下する。

二、訴訟費用は原告の負担とする。

事実

一、原告の請求の趣旨

1  被告が、原告のなした告訴に係る不起訴処分につき昭和四四年三月三日及び昭和四六年一月一三日原告の請求ありたるも、処分の理由を具体的に告げないのは違法であることを確認する。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二、原告の請求原因

1  理由不告知

(一)  原告が昭和四三年六月二八日付及び同年九月二〇日付で名古屋地方検察庁に告訴した恐喝及び名誉毀損等の事件につき、同事件担当の村山弘義検事は昭和四四年三月一日付で右事件を不起訴処分となし、同日その旨を原告に通知した。

(二)  原告は同年同月三日右検察庁において右村山検事に対し処分理由の告知を請求したが、同検事は全く具体的に理由を告げず、更に昭和四六年一月一三日同検察庁において検事正職務代行者である中島友司次席検事に右理由告知を請求したが、前回同様具体的に告げることを拒絶して現在に至るも同様である。

2  右不告知の違法

理由告知は犯罪の具体的事実との関連においてなされるべきであつて、何らの具体性なき理由は社会通念上妥当でなく、原告の請求にも拘らず被告が全く具体的に理由を告げないのは憲法一三条、刑事訴訟法一条、二六一条で保障された原告の権利を否定した違法不当な行為である。

3  原告は前記告訴にかかる事件によつて日常生活における重大な権利侵害を受けているが、処分理由を具体的に告げないために、右権利回復の手段たる犯人の刑事処分に関する不服申立等の処置をとることも、民事上の損害賠償請求において相手方を特定することもできない。

よつて右違法確認を求める。

理由

原告の本件訴えは、要するに、検察官が不起訴処分について、告訴人である原告に対し、具体的に不起訴処分にした理由を告知しないのは適法である旨の確認を求めるもので、いわゆる「不作為の違法確認の訴え」に該当するものであるが、右不作為の違法確認の訴えは、行政庁が相当の期間内に処分又は裁決をしない場合に許されるものである。よつて刑事訴訟法二六一条に規定されている理由告知行為が右処分又は裁決に当るか否かにつき検討するに、右理由告知が「裁決」に当らぬことは明らかであるので以下専ら「処分」に当るか否かについて判断する。

行政事件訴訟法三条五項にいう処分とは国民の権利義務に直接関係のある権力行為と解すべきところ、刑事訴訟法二六一条の理由告知は、告訴にかかる被疑事件につき不起訴処分をなす場合の附随的手続に過ぎず、右理由の告知によつて告訴人の権利義務に何ら消長を来すものではない。よつて右理由の告知が行政事件訴訟法にいう処分に該当しないことは明らかであるから原告の本件不作為の違法確認の訴えは不適法にして、且つその欠缺を補正することができない場合に該当するものというべきである。よつて民事訴訟法二〇二条に則り本件訴えを却下することとし、訴訟費用の負担につき同法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(松本重美 吉田宏 千葉勝郎)

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